空き家対策特別措置法とは?税金が6倍になるってほんと?管理不全空家って何?

全国的に増加する空き家問題に対応するため、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されています。この法律により、特定空家等に指定されると固定資産税が最大6倍になる可能性があるほか、2023年の法改正で「管理不全空家」という新たな区分も設けられました。本記事では、空き家対策特別措置法の内容や、所有者が知っておくべき対策について解説します。

空き家問題の現状と空き家対策特別措置法の概要

日本では急速な高齢化と人口減少により、全国各地で空き家が増加しています。総務省の統計によると、2018年時点で全国の空き家数は約849万戸、空き家率は13.6%と過去最高を記録しました。放置された空き家は、倒壊や火災のリスク、治安の悪化、景観の悪化などの問題を引き起こしています。

このような状況を受けて、2014年に空家等対策特別措置法が制定され、2015年5月に全面施行されました。この法律によって自治体の権限が強化され、管理不全な空き家の所有者に対する指導や勧告、さらには命令や行政代執行などの措置が可能になりました。2023年には法改正が行われ、「管理不全空家」という新たな概念が導入されるなど、より効果的な空き家対策が可能となりました。

空き家問題が深刻化している主な理由は、少子高齢化・人口減少による空き家の増加、相続時の所有者不明化、解体費用の高額さ、固定資産税の特例措置による放置インセンティブなどが複合的に絡み合っています。

空き家の定義と判断基準

空家等対策特別措置法における「空家等」とは、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」と定義されています。重要なのは「使用がなされていないことが常態」という点です。

「常態」とは、概ね年間を通して使用実績がない状態を指し、電気・ガス・水道などのライフラインの停止、郵便物の蓄積、人の出入りがない、庭の手入れがされていないなどの状態から判断されます。自治体によって判断基準は若干異なりますが、概ね3ヶ月から1年程度使用されていない状態を指すことが多いです。

一方、以下のようなケースは「空き家」とはみなされません

  • 別荘など季節的に使用されている建物
  • リフォーム・建替え中の一時的に使用していない状態
  • 入院や転勤などによる一時的な不在
  • 適切に管理されている賃貸・売却物件
  • 倉庫や物置として定期的に使用されている建物
空き家と判断される状態 空き家とみなされない状態
電気・ガス・水道が長期間停止 別荘など季節的に使用
郵便物・チラシの蓄積 リフォーム・建替え中
人の出入りがない 一時的な不在(入院・転勤)
庭・外構の手入れなし 賃貸・売却の空室(管理あり)

特定空家と管理不全空家の違い

空き家対策特別措置法では、問題のある空き家を「特定空家等」と「管理不全空家」という2つの区分に分類しています。

特定空家等とは

「特定空家等」とは、以下のいずれかの状態にある空き家を指します

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空家等に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が最大で6倍になる可能性があります。また、自治体から段階的な是正措置が行われ、最終的には強制的に解体等の措置が講じられることもあります。

管理不全空家とは

「管理不全空家」は、2023年の法改正で新たに導入された概念で、特定空家等ほど危険な状態ではないものの、適切な管理が行われていない空き家を指します:

  1. 老朽化により外壁や屋根の一部が破損している
  2. 雑草が生い茂っている
  3. ゴミなどが放置されている
  4. 害虫や害獣の発生源となっている

管理不全空家は特定空家等に至る前段階と位置づけられ、早期の対応によって問題の深刻化を防ぐことを目的としています。管理不全空家に指定されても、この段階では固定資産税への影響はありません。

区分 主な特徴 自治体の措置 税制への影響
管理不全空家 適切な管理がされていないが、特定空家等ほど深刻でない 助言・指導 なし
特定空家等 著しく危険・有害、景観を損なう等 助言・指導→勧告→命令→行政代執行 勧告以降、住宅用地特例が適用されず(最大6倍)

固定資産税と空き家対策特別措置法

「固定資産税が6倍になる」という話の真相を解説します。通常、住宅用地には固定資産税の特例措置が適用されており

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):固定資産税評価額が1/6に減額
  • 一般住宅用地(200㎡を超える部分):固定資産税評価額が1/3に減額

空き家対策特別措置法では、「特定空家等」に指定され、自治体から勧告を受けた場合に限り、この住宅用地特例が適用されなくなります。その結果、小規模住宅用地では最大6倍、一般住宅用地では最大3倍の税負担増となる可能性があります。

注意すべきは、2023年の法改正で導入された「管理不全空家」に指定されただけでは、固定資産税の特例措置は変わらないという点です。税制面での影響は「特定空家等」に指定され、勧告を受けた場合に限られます。

状態 小規模住宅用地(200㎡以下) 一般住宅用地(200㎡超)
通常の住宅用地 評価額が1/6に減額 評価額が1/3に減額
特定空家等に指定され勧告を受けた場合 特例なし(最大6倍に) 特例なし(最大3倍に)
管理不全空家に指定された場合 従来通り特例適用(変化なし) 従来通り特例適用(変化なし)

行政の段階的措置と所有者の義務

空き家対策特別措置法では、問題のある空き家に対して、以下のような段階的な措置が講じられます

  1. 助言:最初のステップとして、適切な管理を行うよう助言します。強制力はなく、自主的な対応を促します。
  2. 指導:助言に従わない場合は、文書等による指導が行われます。
  3. 勧告:指導にも従わない場合は勧告が行われ、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなります。
  4. 命令:勧告に従わず状態が改善されない場合、期限を定めて必要な措置を講じるよう命令します。違反すると50万円以下の過料が科される可能性があります。
  5. 行政代執行:命令に従わない場合、自治体が強制的に措置を講じ、費用を所有者に請求します。

2023年の法改正では、所有者の責務がより明確に規定され、「空家等の所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする」という責務規定が設けられました。

空き家所有者が今すぐできる対策

特定空家や管理不全空家に指定されないためには、以下のような対策が効果的です

  1. 定期的な点検と管理:最低でも3ヶ月に1回程度の訪問点検を行い、建物の状態を確認しましょう。
  2. 適切な維持管理:屋根や外壁の破損修繕、庭の草刈り、換気などの基本的な管理を継続的に行いましょう。
  3. 活用方法の検討:賃貸、売却、リフォーム後の利用など、空き家の活用方法を積極的に検討しましょう。
  4. 解体の検討:建物の老朽化が進んでいる場合は、解体も選択肢の一つとして検討しましょう。
  5. 専門家への相談:不動産業者、建築士、司法書士など、専門家のアドバイスを受けることも有効です。

まとめ:空き家問題に向き合い、適切な対策を

空き家対策特別措置法は、増加する空き家問題に対応するために制定された法律です。特に「特定空家等」に指定されると、固定資産税が最大6倍になるなど大きな影響があります。2023年の法改正では「管理不全空家」という新たな区分が導入され、早期対応の仕組みが強化されました。

空き家の所有者は、定期的な管理を行い、必要に応じて活用や解体も検討することが重要です。自治体の助言や指導の段階で適切に対応することで、勧告や命令といったより厳しい措置を回避することができます。

空き家問題は個人の問題であると同時に、社会全体の課題でもあります。適切な管理と対策を通じて、安全で快適な地域環境の維持に貢献していきましょう。

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